実験音楽やアンビエント・ミュージックを作る人は知ってるであろうチャンス・オペレーション。これを通常の作曲におけるアイデアの発想方法として(私によって)開発されたのがiTune作曲法です。
まずチャンスオペレーションについての説明です。
エクスペリメンタルミュージシャンの間で通称チャンオペと呼ばれています。
日本語では偶然性の音楽。
ジョン・ケージが作った現代音楽の流れで、作曲の中に偶然おこるコントロール不可能な要素を積極的に取り入れていくというものです。
ここを掘り下げて行けば延々続く記事にはなるのですが、今回はこの考え方を通常一般の作曲に活かす方法、僕なりのメソッドを書きます。
僕は広告音楽とは別にエクスペリメンタルミュージックをやっていて、その活動の中でこの方法に出会いました。(別名義のサイト)
なので、アンビエントや現代音楽といった既存の音楽理論から離れ気味の世界でこそ生きる方法だと思っていました。
しかし、もっと一般的な音楽において使ってみても同じように奇跡が起こることが分かったのでおすすめしておきます。
iTunes作曲法という名前通り、iTunesによって作曲のアイデア出しを行います。
必要なものはDAWと曲が大量に入ったiTune。
方法は
LogicやCubaseなどのDAWで作りかけのトラックをループで流しながら、それと同時にiTuneをランダムで10秒くらいの感覚で曲送りしながら聴き続けるというものです。
そして音が素晴らしく噛み合う瞬間をみつけてそれをヒントに、あるいはそのまま使って曲作りにもどります。
※iTuneを自動で10秒毎に曲を送る方法ですが、Cycling’74のMAXというソフトで作ったパッチを使っています。
MAXのデモをインストールすれば、使えるパッチなのですが元となるスクリプトを書いた人の連絡先がわからないので配布はできません。
欲しい人はatagosounds@gmail.comにメールして下さい。
僕はこれをセッティングして、延々流しながら本を読んだり、ご飯を食べたりしています。
構えて待つのではなく、ながら作業でのんびり待つ姿勢が大事です。
速攻でいい組み合わせが見つかるわけではありませんが、煮詰まったときに手を止めて、30分くらい読書している間、iTune作曲法でiTuneと製作中のトラックを流し続けると、概ね新しいアイデアにつながる音の組み合わせの状態が生まれます。
そこを起点に曲をふくらませるのです。
ポイントは10秒で曲を次に送ることです。
多くの楽曲の冒頭10秒位は、イントロです。
歌も、あるいはビートも入っていない情報量がまだ少ない状態です。
その冒頭の部分であることで、トラックとうまく噛み合いやすくなります。
さらに、仮に音が上手く噛み合わないとしても、こんなフレーズを乗せてみたらいかもしれない、こんな楽器を入れてみたらいいかもしれないといったアイデアの糸口をもたらしてくれます。
即興音楽系の人たちも、淡々とシンプルなことをやりながらいい瞬間がくるのを待って、そこが来てから勝負をかけることを「奇跡待ち」と呼びます。
文字通り、iTunes作曲法は奇跡待ちです。
僕のiTunesのプレイリストだと平均15分に1回っくらい奇跡が起きます。
Apple LoopやAbleton Liveなどの登場で、ループをトラックにかぶせて取捨選択するという方法は最近の音楽制作を行う人にとっては、常識的な作業になりました。
もちろんこれはこれで、能率のいい方法ではあるのですが、同じBPMで揃っていて、ソフトによっては自動でキーまで合わせてくれるとなると、「まあ、どれでも合う。」っていう状態になってしまいかねません。
つまり予想した結果以上のことは、起こりにくい。
もちろん、がっつりそのままリリースできるような1小節がくるわけではなく(来ないともいいきれないのですが)、幾つかの音が美しくひっかかって、これを使おうって思える瞬間が来るんです。
それは本を読んでいても引き離される素晴らしい瞬間です。
[…] そもそも以前、iTunes作曲法の記事の中でiTuneを自動で曲送りする際に配布できない自作のパッチを使っていることは書いたんですけど、 それだと僕しか使えないので、自動でキーボード操作を繰り返してくるソフト(簡単なやつ)を探してたんです。 […]