ミックスは上手くいっているはずなのに、なんとなくパッとしないっていうときは、オートメーションをしっかりやっていないのからかもしれません。
まずDTMにおける「オートメーション」とは?
DAW上の各トラックでボリュームやパン、プラグインの値などの変化を記録してしまうことです。
今やオートメーションができないソフトなんてありません。
つまりそのことが、オートメーションはやんなきゃいけないことの一つだということを表しています。
(一般的なソフトについているのに使っていない機能は、自分に何が足りていないかを示してくれてることが多いです。)
オートメーションが細かく付けられているか否かっていうのは、様々な面から曲の完成度に影響を与えます。今回は4つ上げたいと思います。
1つ目は人間の演奏に近づけるという点です。
例えばシンプルなパーカッションのループにほんの少しのボリュームの上下( 1,2dbくらいでOK) をつけるだけで、一気に完成度が上がります。人間の演奏であれば起こるであろうボリュームの揺れを意図的に作り出すことで、単純なループを少しでも人間の演奏に近づけます。
ボリュームじゃなくても、コンプのアタックや、リバーブへのセンド量などをほんの少しランダムに動かすだけで印象はかなり変わります。
2つ目はミックスのバランスを保つのに必然であるということです。
仮に一曲を通してずっと同じシェイカーのサンプルがなっているとします。
一般的なミックスの手順にそって一番楽器の多い、盛り上がっている部分を最初にミックスしたとします。
そうすると、その部分ではいい感じでなっていたとしても、そこのパートに達する前の、まだトラック数が少ない部分では相対的にシェイカーが大きすぎることになってしまいます。
つまり他のトラックの状況によってボリュームは随時変わって当然なのです。
3つめはリスナーを騙して全体の音圧を得ることができます。
有名なTIPSなのですが、例えばあるポイントからギターリフが入ってくるとします。その場合そのギターリフのなり始め数秒だけのボリュームを上げてその後は下げます。
そうするとリフのなりはじめにリスナーは気づきますから、ある程度のボリュームでギターリフがなっていると感じます。
しかし実際にはそこからリフのボリュームを多少下げても、ボリュームが下がったことには気づかないのです。
これによって楽曲全体のダイナミクスを下げて音圧を稼ぐことができます。
4つ目は曲の印象をコントロールできます。
3つ目の理由と近いのですが、一つの楽器のボリュームが上がってリスナーがそれに気づくと、リスナーの耳は自然とその音を追いかけます。
曲の要所要所でリスナーに聴いてほしい音を分かりやすく提示していくことができるのです。
逆に言うと曲がスタートして終わるまで常に、今リスナーの耳はどの部分にフォーカスしているべきかということがきちんとデザインされていないと、退屈な曲、あるいは意図のわからない散らかった曲になってしまいます。
オートメーション全体に言えることですがボリュームを直接書いてしまうので、後からトラック全体のミックスバランス変えたくなった時に操作しづらいです。
ですので通常オートメーションをしたトラックのアウトを別のトラックにバスで送って、そのトラックで全体のボリュームを調整するという方法が一般的です。
僕の場合トラックのプラグインの最後にWAVESのQ1のような負荷と音質変化の少ないプラグインをさして、そこで全体のボリュームを調整しています。その方がわかりやすいので。
オートメーションは特にループを多用していたり、同じフレーズを繰り返すダンスミュージックやエレクトニカには必須です。
逆に言うと同じ打ち込みでも、長いフレーズをMIDIでベロシティーやアーティクレーションまで細かく打ち込んだオーケストラ系の楽曲においては、圧倒的な効果というのは感じにくいかもしれません。
これらのオートメーションは生楽器の録音の場合はすでに施されているのと同じであることを忘れないようにしないといけません。
それだけ生楽器の演奏、歌の録音には情報量がつまっています。打ち込みの場合、その情報量の不足をできる限り補ってあげなければいけないのです。