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村上春樹と小澤征爾の対談本から得たDTMで参考になること8つ

投稿日:2017年05月29日 更新日:

村上春樹、小澤征爾著「小澤征爾さんと、音楽について話をする」という本を読みました。
この本は具体的な示唆や技術を得るというよりは、小説と音楽の世界のそれぞれの孤高といってもいい二人の会話の中にある雰囲気のようなものをゆっくりと味わうようなものなのかも。

それでもDTMer目線、打ち込み屋目線で見て参考になることがあったので書きます。

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まず全体を通して村上春樹は音楽を観念的に捉えようとしてる。
それに対して、小澤征爾は実際的に捉えているっていう違いをつよく感じます。

もちろん小説家と音楽家が音楽についての話をしてるからそうなるのは当然ですけど、その微妙な温度差が終始縮まらないのがいい。

小澤「具体的に言いますとね、うまい人は、というか、プロの指揮者はオーケストラに指示を出すわけです。今この瞬間はこの楽器を聴いてくれ、ほら今はこの楽器を聴いてくれという具合に。そうするとオーケストラの音がすっと合う」

村上「楽団員がその都度その都度、ひとつの楽器に耳を集中する、ということですね」

小澤「そうです。今はチェロを聴いてくれ、今はオーボエを聴いてくれ、みたいに。カラヤン先生はそれがもう天才的にうまかったですね。…」

カラヤンのオーケストラの音作りについて叙述。
アレンジやミックスをする際に、ただ響きのいい状況を作るのではなくて、いま現状どの音をリスナーが聴くようにしむけるかを作ってくということ。
ドン・セベスキーのコンテンポラリーアレンジャーにも楽曲のアレンジ面から同じことが書いてありました。
コンテンポラリーアレンジャー ドンセベスキー (初版)

 

小澤「これは残響が強いなあ。ほら、ここなんか前の音がきえないうちに、次の音が入ってきてます。こんなことありえないですよ、普通は」

オーケストラの録音とホールの残響の話題の流れで、古楽器によるベートーヴェンの協奏曲3番のレコードを聴いてからの発言。
リバーブの長さや深さを決める1つの尺度として、次の音の出だしの時点でどの程度残っているかに意識を向けてみるのもいいかもしれない。

 

村上「伸びのある美しい音ですね。ホルンは全部で何人なんですか?」
小澤「四人だけど、この部分を吹いているのは二人だけ。でも同時に吹いているんじゃなくて一小節ごとに、途中で短く重ね合わせながら交代します。息継ぎの間が空かないように。ブラームスがそうするように支持しています。」

ブラームスの演奏指示によってホルン息継ぎの音を消している説明をしてます。
つまり金管楽器の打ち込みで、そういう意図した演奏方法が取られない場合は息継ぎの音が入ることが自然であること、そして消そうと思えば消せるということを学びました。

小澤「これがディレクションです。今の音、四つの音、たんたんたんたん、これがこの曲の最初のフォルテシモです。そういうことはちゃんと(意識して組み立てて)やってるわけ」

あるポイントで最初にフォルテシモが現れることに言及してます。
クラシックの人からしたらきっと当然なんだろうけど音の強弱や大きさはかなりシビアに考えて構築していることが「最初のフォルテシモ」という言い方から分かります。
つまり何となく後半にかけて盛り上がって一旦落とすとかではなく、きっちり切り分けて作ってる。

まるでドイツの深い森の奥に、聴衆をいざなうかのように。その響きはブラームスの内奥にある精神世界の、大事な一つの部分を担っている。その背後でティンパニーが小さく、しかし執拗に脈動を刻む。意味を持つ何かを密かに待ち受けるように。

こんな感じで楽曲に対する村上春樹の特有の描写が随所に入ります。
熱心な音楽の聴き手というのはこういう風に感じながら音楽を聴きたいと思っているのかもしれない。
こういった叙述が可能な音楽を作ろうと意図してみる。
あるいは今入れている楽器は言葉にするとどういう表現で現せるかをかんがてる。

村上「スコアを読み込むというのはいつやるんですか?」
小澤「一日のうちでということ?」
村上「そうです」
小澤「朝ですね。早朝。集中しないといけないし、一滴でもアルコールが入るとできないから」
村上「比べて言うのも何ですが、僕もいつも早朝に仕事をします。いちばん良く集中できるから。・・・・・」

「比べて言うのも何ですが、僕も朝です。」

村上「そういえば、昨日のチャイコフスキーでも、実に見事な演奏なんだけど、コントラバスがあとニ、三本あればもっと底鳴りのする音がが出るんだろうなと感じました。一本だけだと、ちょっと、こころぼそいですよね。」

DTMでは例えばコントラバスを打ち込むのに何も考えずに音色を選んで音量と定位を設定しますが、大きな音量が出る根拠にはその楽器が何本そこにあるかという数が起因しているということを考えて音作りをしないといけないことを感じました。
オケの自然さをもとめるなら、大きなコントラバスの音は複数であるはずだから音像はぼやけるべきなのかも。

小澤「そういうことです。それと彼がよく言うのは、弱い音をきちんとだすためには、その前の音を心持ち強く弾けということです。その前に弱い音を出してしまったら行き場所がないわけですからね。」

ロバート・マン氏による後進への指導のなかで頻繁に登場するアドバイスのひとつとして。
これも打ち込みにおいてメロディーが他の音に埋もれてしまうような場面で、EQやコンプによって解決するというのとは別の解決の仕方と捉えられます。
1つの音をなり始めだけ大きくオートメションを書くことでその音がその後も同じ位の音量でなり続けるように錯覚させるミックスのテクニックと似ていますね。

__

基本的には二人がレコードやDVDを鑑賞しながら、会話が進んでいきます。
YouTubeでそれに該当する音源を探して再生しながらゆっくり読んでいました。(結構見つけられました。ただ動画が権利的にグレーなのでリンクを貼ることはしませんが)

音楽全般の楽しみ方や人生論的な側面で読めばまた違った部分がみえてくる本だと思います。

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