90年台中盤ごろのことですが、当時のミュージシャンの志向の移り変わりを「Punk goes to Funk」という言葉で表していた時期がありました。
これはパンクで有名になったミュージシャンはその後ファンクっぽくなっていくというもの。
たぶんロッキン・オンとかスヌーザーとか当時影響力の強かった雑誌メディアの記者が言い出した言葉だったとおもいます。
実際にはファンクというよりもヒップホップやサンプリングミュージックに変わっていくミュージシャンが多かったのは間違いないです。
当時のブラックミュージックを一括りにファンクと呼んだ感じでしょう。
確かに、90年台後半は容量の大きいサンプラーやコンピューターの性能が一気に飛躍した時期ですので、多くのミュージシャンがそこに可能性を見出したのは想像できます。
ところで音楽理論だけみてもPunkとFunkは意外にも似てます。
Punkの3コード
コード的に超大雑把に言えばPunkは3つのコードだけで作れると言われます。
キーをCにして言うと
C F G とか C F Em です。
正直、実際には厳密にこれだけで作られている曲は思い浮かびませんが(!)
このコードのパワーコードだけで弾くことはできます。
ギターでこの進行を8分でジャジャジャジャって弾くだけでPunkっぽくなります。
Funkの3コード
それに対してFunkの代表的なコード進行はブルース進行というもの。
キーC/Amで使うコードは
C7 F7 G7
パンクの3コードを全部セブンスにしたもの。
これを12小節単位でじわじわ展開します。
説明はこちらのサイトhttp://www.plainliving.jp/kudoi/kudoi18.htm
に分かりやすくまとまってました。
Punkの3コードをセブンスにして、焦らしながらやるのがFunkです。
そこだけ見るとすごく似てます。
実際にはFunkのほうがPunkよりも10年位登場が早いですが、この2つの音楽に共通して言えることは不良の音楽だったこと。
勉強嫌いの不良少年が気の向くままに楽器をならした音楽っていうイメージだということです。
最初にコードをいくつかだけ覚えてしまえば、あとはそれをこねくり回していくらでも作っていこうとしているような自由さと、その外には行けない不自由さの両方が感じられます。
Funkの3つのコードはすべて7thですから、一般的な音楽理論にあてはめるとコードごとに転調していることになります。
にもかかわらず、どうして7thが選ばれたのか?
一説には耳の良かった黒人ミュージシャンにはコードの基音の倍音が聞こえてしまっていたからという説があります。
例えばドの音の倍音を一つずつなぞって行くと最初に出てくるコードの構成音以外の音はシ♭です。

倍音 (Wikipediaより引用)
だから耳の良かった黒人ミュージシャンはCの中に既にC7の響きを感じていて、かつ彼等は不良だったから音楽理論なんか無視して聞こえてくるシ♭を足したのではないのかということらしいです。
いつの時代も新しいものを作るのは不良たちなのかもです。