今回はローカットについて。
ローカットがうまくなるとミックスをすっきりさせて細かい音をきれいに通せるようになります。
そもそもローカットとは?
その名の通り各トラックのロー(低域)をカットするという作業です。
ハイパスフィルターやEQを使って行います。
各トラックのイコライジングやコンプでの音作りの中の一環の作業と捉えられがちですが、実は違ってパンやフェーダーバランスを取る前にやるべき作業だという考え方もあって、ぼくもそう考えてます。
つまり
ローカット→パン→バランス→EQ、コンプ
という順序でやる作業の一番最初です。
基本全部のトラックにかけるつもりで
すべてのトラックに対してかけるつもりでいて問題ないです。
リファレンス曲を用意して同じくらいのボリュームで鳴らしながらどのくらいカットすべきかを考えていくのがいいと思います。
全トラックなっている状態のリファレンス曲から単体トラックの低域がどのくらい出ているかを聞き取るのはすごく難しいですが、リファレンスと同じくらいにすることを常に意識して探っていけば身について来ると思います。
楽曲の用途や流行
一般的に言われている楽器ごとのカットすべき周波数というものもありますが、ジャンルや用途、そのときどきの流行などによって大きく動きます。
例えばHIPHOPのなかで考えてみても分かるのですが、同じジャンルでもどういう意図でその楽曲が使われるかでどのくらいローカットをするべきかは変わってきます。
クラブでかけるヒップホップであれば迫力ある感じに仕上げることが大事ですので、ローカットしつつどのくらい残せるかという視点で考えます。
キックのバリエーションの一つかなと思うくらい低域が出ているスネアがなっていることもあります。
ローカットが足りなければ低域がだぶついて音が濁りますのでそれを避けた上でどのくらい低域を残せるかと考えます。
一方、新製品のCMに使われるようなヒップホップは精細で細かな雰囲気が重要視されるケースが多いですので、可能な限りどこまでローカットできるかという逆の視点で見ます。
ハイハットのアクセント程度にしか印象のないスネアを見ることすらあります。
ローカットしすぎるとやがて曲がカサカサになってしまいますので、それを避けてどのくらいまで切っても大丈夫かと考えます。
シンプルで軽いイコライザーを使う
前述の通り全トラックに挿しますので、各トラックにアナライザー付きの重たいEQを使うのは避けたほうがいいです。
WAVES Q1などシンプルで負荷が低くアナライザーなどの音以外の部分にCPUを使わないEQやフィルターを使ったほうがいいです。
より積極的にEQによる音作りを行うトラックに関してのみ負荷の高いEQを使うようにしたほうがいいと思います。
でもアナライザーは使う
しかしアナライザーも必要です。
どのくらい低域が出ているのかはある程度以上の音量やモニター環境でなければ確認できないことが多いです。
しかしアナライザーは上述の通りCPU負荷が高いのでマスターに一つだけ挿しておきます。
各トラックをソロで再生しながらマスター上のアナライザーを使って確認するといいです。
最大でも-18db/octで
カットするQカーブですが-18db/octを超えないようにします。
それよりも高いカーブでカットしてしまうと、音像がぶれますので音の芯が見えずらくなったり、変に音の位置が前後によじれてしまうケースが出てしまいます。
少なくとも音が変化しないところまでは切るという考え方
ローカットにおいてはどこまでカットすべきかということが常に悩むポイントになるわけですが、よく言われるローカットの手法に「音が変わらないところまではすくなくともカットする」という考え方があります。
EQをオンオフした際に耳で聴いて音が変わらなければ、すくなくともそこまではカットします。
もちろん、それ以上カットするケースは当然あるわけですが、この聞こえない範囲のローカットを終わらせればそこからフェーダーバランスを取る作業に移ってその後に決断することでより正解が見えやすくなります。